文字サイズ

ホーム > 最新情報一覧 > <報告>第9回JICA-JISNASフォーラム「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」

<報告>第9回JICA-JISNASフォーラム「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」

令和21211日(金)、オンライン(Zoom)により、第9JICA-JISNASフォーラム 「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」が開催され、大学関係者、JICA関係者、国際機関、民間企業等より100名超の方々にご参加いただき、講演、パネルディスカッションが行われました。
 新型コロナウィルスによる事業や教育への影響の報告や状況、対応策等を共有し、Withコロナ時代の今後に向けての新たな方策について議論されました。その概要をご報告いたします。

プログラムの内容

開会挨拶

JICA萱嶋理事より、コロナ禍で途上国の農業や国際協力を取り巻く環境が変わる中、JICAでは、開発大学院連携プログラム」の実施にあたり、大学の協力を得て、本年度から、コロナ禍の状況下ではあるが、農林・農村開発分野のプログラム(Agri-Net)による留学生来日を開始し、また、日本でのグローバル人材育成も課題であり、Withコロナの状況下で国際協力をいかに進めて行くべきか、大学とJICAとの連携のあり方等が検討、実践されることへの期待が寄せられました。

講演

【講演1】 伊藤 圭介  JICA経済開発部・次長
 ○演題:「With/Postコロナにおける開発協力の新たな取組みについて」
 新型コロナウィルスによる途上国農業・農村開発への影響は大きいがレジリエンスが重要になり変化に対応した支援が必要であること、また、JICA事業の影響については、研修や調査等可能な部分は遠隔で実施している旨説明があり、遠隔にて効果的に事業を継続していくことも可能であることが報告され、実例として、オンラインでの協議を通じた案件形成、遠隔研修参加者の意欲を高める工夫、遠隔のメリットを活かした柔軟なプログラムの策定等の事例について紹介がありました。

【講演2】 山内 章  名古屋大学大学院生命農学研究科・教授 /JISNAS副運営委員長
 ○演題:「コロナ禍の留学生受入と遠隔教育におけるチャレンジ」
 JISNAS団体会員34大学41部局より事前に実施したアンケート結果をもとに、コロナ禍における大学教育の状況、留学生の受入状況が報告され、多くの大学でオンライン教育の提供、留学生の受入に係る柔軟な対応や工夫、また課題点も共有されました。また、名古屋大学では、コロナ禍においても学生の日本からの留学、海外からの受入等、国際交流のニーズに全面的に継続して支援していく方向にて、現時点で進行中の支援や取組みについて共有されました。2014年より設置されたサテライトキャンパスにおけるハイブリッドでの教育についても紹介がありました。

 ※アンケート結果の概要につきましては、後日ホームページに掲載予定です。

パネルディスカッション:「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」

パネリスト
  牧野 耕司  JICA経済開発部 部長
  宮田 真弓  JICAガバナンス・平和構築部STIDX室 副室長
  高垣 美智子 千葉大学大学院園芸学研究科 教授
  山内 章    名古屋大学大学院生命農学研究科 教授

モデレーター
  伊藤 香純   名古屋大学農学国際教育研究センター 准教授

○JICAのWithコロナ禍の今後の方向性について
 牧野:戦略とアプロ―チを重視して事業を進めていきたいと考えており、戦略については、コロナ禍という第二次大戦以来の驚異を経験し、農業分野におけるレジリエンスの強化支援、気候変動やフードバリューチェーン、DX、農業保険などを新しいテーマに取り組んでいく方向で進んでおり、JISNASとの連携を強化していき、また、アプロチの観点からは、遠隔と現場とのハイブリッドで協力を継続することが重要である。

○JICAの遠隔教育について
 宮田:JICAの新しい取組みである「JICA-Virtual Academy & Network (VAN)」について紹介する。デジタルツールを活用して様々な関係者との協働の場を提供することを目指しており、遠隔でも関係者間のつながりや信頼を維持し、研修等で作成した教材等のコンテンツの蓄積・活用を推進していく方向で進んでいる。

○大学のグローバル教育について
 高垣:千葉大学では、2020年度に新設された「グローバル人材育成"ENGINE"」プログラムを進めており、本プログラムは、学部・大学院生の全員留学、スマートラーニングの実践、グローバル教育の充実の3本柱で構成され、20219月迄は留学の見合わせが決まっていますが、スマートラーニングによりオンライン授業や英語プログラムの提供等によりバーチャル留学の実施を進めている。

○大学教育でのJICA連携の可能性について
 高垣:国際協力論の授業ではJICA専門家等の関係者より、学生が国際協力の現場やキャリアパスの話を聞くことによりモチベーションの向上につながっている。
 牧野:大学教育への連携のさらなる可能性として、オンラインは現場視察よりも参加が容易であり、途上国やJICA関係者の声を直接聞くことができるメリットがあり、JICAが関係者の紹介に協力するなど、人材育成における連携も以前より可能になるだろう。
 伊藤:窓口が整備されるとより多く大学教育に活かせると考える。

○海外キャンパスでの状況について
 伊藤:メリット・デメリットをふまえ、オンラインをバランスよく活用していくためにどのような配慮が望ましいか。
 山内:誰を対象にどのレベルで教育をするか、夫々丁寧に議論する必要があり、オンラインにて現地の情報を授業で得る等可能性は広がったが、実験実習、論文やデータ解析等、研究指導においては対面でのコミュニケーションの重要性を感じており、分野やレベルに応じてオンラインと対面の効果的な使い分けは、今後の課題であり検討を進めたい。

閉会挨拶

九州大学緒方教授(JISNAS運営委員長)より、オンラインにおける新たなチャレンジに言及しつつ、グローバル化の転換点となった2020年、そして今後に向けて、本日のフォーラムが関係者の国際協力推進の一助となることへの期待が寄せられたました。

総括

JICA、大学双方がどのようにwithコロナの時代に立ち向かおうとしているか共有し、共有コンテンツ作成、オンラインが有効な部分と対面が必要な部分、ハイブリッドのベストミックスを見極め、連携方法を模索し進めていきたいと考えています。JISNASでは本日のご意見やアンケートの結果等を参考にしながら、分科会の活動を通じて新たな連携に繋げていきたいと存じます。
 コロナ禍にて途上国の農業や国際協力を取り巻く環境が変化する中、新たな方策を見出す機会となりました。今回は初めてオンラインでの開催になり、多くの皆様にご参加いただき大変感謝いたしております。JISNASメンバーと、行政や関係機関等とのさらなる連携、交流を図り、JICAとの連携により今後もこのような機会を提供していきたいと考えています。


カテゴリ: JISNASの活動 |掲載日: 2021年3月19日