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<報告>JICA-JISNASシンポジウム2023「改定開発協力大綱における国際頭脳循環への取り組み」

令和5年12月11日(月)、JICA-JISNASシンポジウム2023「ODA大綱における国際頭脳循環への取り組み」が対面とオンラインのハイブリッド形式により開催され、大学関係者、JICA関係者、国際機関、民間企業等よりご参加いただき、活発な議論が交わされました。その概要をご報告いたします。

概要報告

講演

【講演1】 日下部 英紀  外務省国際協力局 審議官
 ○演題:「開発協力大綱の改定のポイント
 開発協力大綱が改定された背景とねらいについて説明がありました。特に、変化する国際社会の複合的危機に対して、より開発途上国との関与を強化して、共に取り組むために、様々なアクターの取り込みとその連携強化を促す重要性が強調され、「質の高い成長」と貧困の撲滅に向けて、実施体制を強化していく旨が共有されました。

【講演2】 上田 大輔  JICA人間開発部 高等教育・社会保障グループ 次長
 ○演題:「JICAの高等教育協力における国際頭脳循環に係る取組み
 JICAの高等教育協力の事例と共に報告がありました。とくに、ASEAN10カ国を対象とする人材育成事業SEED-Net(ASEAN工学系高等教育ネットワーク)を通して、学位取得や共同教育、共同研究プログラムが実施されたことや、取り組みを通してネットワークが構築されてきた成果が紹介されました。続いて、将来計画として日・アフリカ間の大学ネットワークを通じた人材育成支援の一環として、高度人材5,000人育成構想について共有されました。 

パネルディスカッション:「国際頭脳循環の促進に向けた先進事例の共有と展望」

パネリスト
  大蔵 聡    名古屋大学大学院生命農学研究科・副研究科長/教授
  古閑 一憲  九州大学大学院システム情報科学研究院・教授
  百村 帝彦  九州大学熱帯農学研究センター・センター長/教授
  山本 光夫  東京大学大学院農学生命科学研究科・教授/Director,
           International Program in Agricultural Development Studies (IPADS)

モデレーター
  江原 宏   JISNAS事務局長/名古屋大学農学国際教育研究センター長・教授(JISNAS事務局長)

【概要】
 名古屋大学の大蔵教授より、コロンビアにおける牛肉生産性向上を目指したスマート畜産技術の開発と、高付加価値なバリューチェーンの確立による地域開発をめざす「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)」の紹介およびアジア諸国における名古屋大学アジアサテライトキャンパスと本邦キャンパスとの連携によるハイブリッド型博士学位取得プログラムについての共有、九州大学の古閑教授より、農業生産における窒素循環の危機的課題に対して、工学系の見地、とくにプラズマ技術の活用によって取り組む研究のこれまでの成果と、開発途上国の食糧安全保障への応用の可能性についての説明、九州大学の百村教授より、同センターにおける国際共同研究を通じた国際協力の取り組みに関してペルーで展開されているSATREPS事業(国内の複数の研究機関とも連携しながら、現地の大学と共に、気候変動の影響を受ける森林の統合型管理システムの開発とその普及に取り組む)も交えての説明、東京大学の山本教授より、同研究科内の英語コースであるInternational Program in Agricultural Development Studies (IPADS)プログラムの概要についての共有および国際連合工業開発機関(UNIDO)との連携や、エジプト日本科学技術大学との海洋プラスチックごみ削減のための共同研究および教育事業交流等についての説明がありました。
 JICAと大学との新たな連携の模索の重要性、海外で活躍を希望する学生へのアプローチ、開発途上国の現場に入っている民間企業を参画させた情報共有の場の提供等、参加者との活発な議論や意見交換がなされました。

総括

IMG_4082.jpeg気候変動や長期化する国際紛争が世界規模で食料システムに影響を及ぼしている昨今、2023年6月に改訂された国際協力大綱では「共創」がキーワードであり、知見を持ち寄って課題に対応することの重要性、また、複雑化する国際問題に対応するためには、ますますの国際化が重要であり、本シンポジウムが大学や研究機関とJICAの「国際頭脳循環」を促進し、さらなる連携強化の契機となるよう期待の旨発言がありました。
 これまでJISNASは創設以来一貫して人材育成に関して議論してきた経緯があり、ODA大綱の改定に伴って盛り込まれた「オファー型協力」の理念に則り、これまで大学が蓄積してきた議論と経験を活かして開発協力の場で共創するステージに入り、大学の科学技術力や研究力の低下とともに海外に向かう学生の絶対数が減少傾向にあるという大学が置かれた状況について、関係者が自覚し、このような社会的な兆候に対して、今後は多分野、多機関とのネットワークをつくっていきたい旨抱負が述べられました。
 本フォーラムも多くの皆様にご参加いただき大変感謝いたしております。JISNASでは、フォーラムでのご意見等を参考にしながら、分科会の活動に繋げて参ります。JISNASメンバーと、行政や関係機関、民間企業等とのさらなる連携、交流を図り、JICAとの連携により今後もこのような機会を提供して参ります。


カテゴリ: JISNASの活動 |掲載日: 2024年4月 1日