<報告>第5回JISNAS-FAO合同セミナー「ウクライナ危機と動物疾病」
JISNASでは、昨年度より、FAO(国際連合食糧農業機関)駐日連絡事務所との合同セミナーを定期的に開催しており、本年度初回となる第5回JISNAS-FAO合同セミナーを、6月3日(金)16:00-17:00にオンラインで開催いたしました。
今回のセミナーは、ウクライナ危機による世界の食料供給や価格高騰、栄養不良などへの不安が広がる一方で、これまで取り上げられる機会が限られていたウクライナにおける越境性動物疾病の広がりとその影響に焦点を当て、「ウクライナ危機と動物疾病」と題して、FAO欧州・中央アジア地域事務所 動物衛生・生産 シニアオフィサーのライズマン・エラン氏より基調講演をいただきました。また、コメンテーターとして、国際獣疫事務局(OIE)ウクライナ代表及びウクライナ農業政策・食料省ウクライナ首席獣医官(CVO)のシェブチェンコ・オルガ氏、東京大学大学院農学生命科学研究科 教授の芳賀 猛 氏、一般社団法人コンサーベーション・インターナショナル・ジャパン 代表理事の日比 保史 氏より貴重なコメントをいただきました。
現下のウクライナ情勢を踏まえ、世界的に食料安全保障の重要性が叫ばれる中、「動物疾病から生じうる危機」については一般的にも政治的にも、十分に認識されていないのが現状です。住民が退避した後、置き去りとなった家畜と地域に生息する動物の距離が縮まることや新たな疾病の発生、また植物も含めた生態系の変化などを通じて中長期的に食料安全保障を脅かす可能性があることを我々は認識しなければなりません。一見無関係なように見える、生態系、家畜、ヒトの衛生・健康は相互に関連していることから、人間活動がもたらすさまざまな影響や課題を、「ワンヘルス」(分野横断的な課題に対し、人、動物、環境の衛生に関わるものが連携して取り組む)の視点から捉え直すことが、健全で持続可能な社会の構築に向けた第一歩になると実感する機会になりました。
現下のウクライナ情勢を踏まえ、世界的に食料安全保障の重要性が叫ばれる中、FAOの専門家による基調講演、また、コメンテーターの皆様からの多角的な視点と共に最新の情報を共有することができ、大変有意義なセミナーとなりました。ウクライナで起きていることに、農業、農学に関わる者として、大きな関心を持ち続けるきっかけとなれば幸いです。今後もJISNAS-FAO合同セミナーを企画、実施してまいりますのでよろしくお願いいたします。
カテゴリ: JISNASの活動 |掲載日: 2022年6月17日